ケトルベルは重ければ重いほどよいのか!?

ちょっと挑発的なタイトルですが、今日は”重量”をテーマに書いてみます。

まず始めにお断りを入れておきますが、私はKBスポーツ・リフターなので、KB競技者の観点から書かせて頂きます。
洋の東西を問わず「男なら強くなくては!」と考える男性は多いです。私のいる(ウエイトリフティングの)世界では特に「強い男性=セクシー」と思う女性が殆どです。重いものをガンガン上げればカッコ良く見えます。良い例がOKCのパートナーのジョンで、彼は常に男性達から「自分より強い男」として憧れられ、女性達からはとにかくモテます。彼が人の心に訴える文章が書けるとか情熱的な性格というのも影響している筈ですが、若し彼が全然重いものを上げられなかったとしたら、今くらいモテてはいなかったかもしれません。笑  次の動画では、アーノルドフェスティバルの時、「私を持ち上げて!!」と女性達が次々にジョンにリクエストして、ジョンは「もうかんべんしてくれ〜」と言いながらも女の子達を片腕でリフトしています。一人目はプロ・フィットネスモデルのセレブ、モニカ・ブラント、2人目は日本プロボディービルダーのクイーン、神田知子ちゃん、、、、などなど。 ジョンは元々一般人より大きくて一般人より(肉体的な)力が備わっている為、その身体と力を活かした仕事をしているといえます。

次の動画はジョンが85分間の間に合計1451.5Kg分の重量をケトルでリフトしています。一番重いベルはカスタムメイドの70kgOKCベル、その次に片手にベル2つ=80Kgでプレス、、、、。強力です。

上の2つの動画はけっこう前のもので、ジョンが本格的にKB競技者の道を歩み始めてまだ間もない頃です。この頃はまだ「重いものを見れば直ぐに上げてみたくなる衝動」にかられていました。彼に取っては“重ければ重いほどカッコいい”時期だったのです。しかし、本格的なKB競技者となってからこの考え方は大きく変化しました。 以前もここで書いた様に、彼は昨年ハワイで、それまで誰もリフト出来なかった108kgのベルをクリーンしました。それは周りの人達からはやされ、余興として行ったのですが、もうこの頃は「重ければ重いほど良い」という考え方はなく、たとえ20Kgや24kgといった彼にとっては軽いベルでも「より正確に美しく沢山の回数を上げる」事の方が彼にとっては重要となりました。

16Kgダブルベルでジャークを10分間で140回上げたとします。皆さんにはこれは「スゲー」と思う数字ですか? ケトルトレをされている方なら「別に大した事ないじゃん」と思う方もおられることでしょう。85分間に合計1451.5Kgを上げる動画は多くの人が「スゲー」と思って観ます。しかし実際には16kgダブル=32kgx140回=2032Kgを10分間で上げる事の方が重量(+時間)で見れば上なのです。要するに「持ち上げる媒体の重量が重ければ良い」訳ではないのがKBスポーツ・リフティングなのです。 ジョンは今世界チャンピオンのデニス・ヴァシリエフのコーチの元でトレーニングしてますが、今でもデニスの送ってくるプログラムには16kgリフティングが時々組まれています。 そしてジョンはその16kgのセットにずいぶん泣かされています。今でも70kgが上げられるのに、です。 16kgダブルジャーク10分間140回という数字は、OKCJの資格コースの実技試験のヘビーウエイト体重クラスの合格ラインです。体重105.1Kg以上の男性は16kgベルを10分以内に合計2032kg分上げなければ合格しません。

KBリフティングのこのような事情を知らない人は、媒体だけを対象にしてバーベルリフティングとKBリフティングを比較し「バーベルなら100kgがジャーク出来る。KBで16kgを上げて何の意味があるのだ? 16kg程度を振り回して強くなれる訳がない」などと言ったりします。
結論を言うと「KBスポーツ・リフティングは、ただベルが重ければ凄い訳ではない」「KBスポーツ・リフティングとダンベルやバーベルを、媒体(個体)の重量だけで比較するのは間違い。強さの表わしかたやストレングスの使い方などがが異なるため。」「KB同士であっても、例えば16kgを100回リフトするのと48kgビーストを10回上げるのでは16kgx100回の方が総重量では全然上である、といった考え方もしてみること」です。 かといって、16kgベルで100回リフト出来る人が48kgベルを10回上げられる人を大した事ないと思うのも、これ又大きな間違いです。48kgx10回上げられる人はそれなりのストレングスや技術を持っている筈だからです。ついでに言うと、同じKBリフティングでも、強くなる為にKBを使用するハードスタイルとスポーツとして行うGSスタイルも、どっちが良いとか悪いとか、上か下か、といった議論は「アメフトとラグビーではどっちが良いか悪いか、上か下か」と論議するようなもので、どちらもそれぞれに特色のあるもので甲乙を付けるものではないという事を理解して下さい。

軽いベルを重く見よう!
よく「次は何キロのベルを買うべきかな?」「16kgが軽過ぎる様になってきたから次は思い切って24kg買ってみるか」などと思っている方は、是非このブログを読んで良く考えてみて下さい。目安としては16kgを、シングルジャークやスナッチで200回とかが楽に出来る様になったら次は20Kg〜24kgと、時間をかけて少しずつ重量を上げて行く事を奨めます。16kgの軽いベルだからといって軽視してはいけないのです。 本当に「より重い方が良い」と思う人ならアトラスストーンやログなどを上げるストロングマン・トレーニングの方がKBより向いているかもしれません。見せる筋肉をつけたい人にはバーベルやマシンの方が有効でしょう。そしてどうしてもKBで、より重い重量に行きたいのであればKBのストロングマン・トレーニングというものがあります。32kg(女性は24kgから)スタートして48kg以上まであったかと思います。これらのヘビーベルを3〜4分間に何回上げられるか(プレスやジャーク)というトレーニング(競技でもある)です。しかしこれはちょっと特殊分野であり、しつこいようですが、一般のKBスポーツ・トレーニングでは”重ければ良い”という考え方はありません。

自分に合った重量で、自分の目的に合ったKBトレーニングを行って欲しいと思います。競技者とかでなければ好みのトレーニングを行うのも良いでしょう。そして自分より軽い重量でトレーニングしている人を下に見るような言動はどうか慎んで下さい。 (こちら(海外)でも私達は同じ事を訴えています。)