KBは正直だ

私は基本的にロングサイクリストですが、今年の2月のカリ・オープンでは5分間スナッチを行いました。

自分たちが主催者の場合、本当に大変でウォームアップの時間もあまりありません。精神的にもイベントの進行の方が自分のセットより重要に感じます。
それでも自分たちも皆と一緒に頑張る事は大事なので、、、、頑張るのです。

私の体型は日本人の平均サイズより小柄で体力も元々人並み以下です。膝も極端に弱く、重いものを持ち上げるのは子供のときから苦手でした。そんな自分がよりにもよってウエイトリフティング・スポーツの世界に居る事が不思議でもあります。体力人並み以下で20代とか若い訳でもなくなんでそれでもKBをやってるかと言うと、楽しいからです。 大きな理由の一つは仲間が居る事ですが、それより前に、技術を覚えたからです。KBスポーツは突き詰めて行くと職人芸的な技術の習得が必要と分かってきます。技術があれば私でも、ある程度の重量のKBをある一定時間上げ続ける事ができます。そしてそれを続けて行くと必ずレップ数は向上して行くので楽しいのです。

LCに関しては、私の技術はロシアのコーチ達からも時々褒めてもらうことがあります。長い間こればっかり練習してきたので技術を覚えた為です。しかし! スナッチはまだまだ研究と練習が必要です。私はOKCジムではジャーク、LC、スナッチとなんでもコーチしますが、指導はできるのに自分のスナッチレーニングとなると、毎レップを均等に同じフォームや技術で上げる事ができず苛立ちます。AKCのフェドレンコが昔スナッチ上達の”秘訣”を語った時こういってました。「沢山のレップ数のスナッチを行いたければ沢山スナッチする事だ」 当たり前の事言ってると思うでしょう。引っ掛け言葉のようですが、これは「沢山のレップ数のスナッチを行う=競技会でハイレップ数を目指す。」という意味が込められている。「沢山スナッチする事だ=つべこべ言わずひたすら何百回も何千回もスナッチの練習を続ける事」という意味。 ようするに「スナッチをマスターするには多くの時間を使ってひたすら練習を続ける以外にない。」と言っているのです。どんなにマニュアル本を読んだりDVDを観て研究しても、実際に何百回も何千回も練習しなければスナッチは上達しないのです。

ジムで練習していると、仲間達は優しいから多少技術が下手でも「Nice Nazo! 」などと褒めてくれたりします。でもKBは馬鹿正直です。絶対に褒めてくれません。技術が下手だとKBは私に、あるいは私の手に恐ろしく厳しい仕打ちをしてきます。

2月のカリ・オープンで5分間スナッチを行った時、私の手はそれまでの練習ですでに皮が剥けそうな状態でした。こんな手のコンディションで本番に臨んだ私は、リフターとしてのプロ意識が欠落してたと言えます。そしてそんな私にKBは「そんな手のコンディションでオレをリフトしようとするのか。なめるなよ。」とでも言わんばかりにKBは私にコントロールさせてくれず、私は競技開始たった2分目で手の皮がベロリと剥けてしまいました。もう痛いのなんのって! でもわずか5分間の競技なのだから皮が剥けようと途中でベルを置く訳には行かぬとリフトを続けます。リフトの途中で手の平に出血すると、ベルのハンドルが手の平をこする度に出血が増して、ハンドルは血で滑ってヌルヌルですっぽ抜けそうになる為痛くてもしっかりハンドルを握ってしまいます。しっかり握るから益々スナッチしにくいし益々出血は増すし、、、、という事を経験しました。
私は一日中写真を撮り続ける必要があったので、自分の出番は最一番最初のフライトにしてもらってました。リフト中手の皮が剥けた所から出血し、ベルのバックスイング時やトップで血を背後の白いバナーに飛び散らせてしまいました。笑  このイベントの為に作った新しいバナーなのに競技会一発目から血しぶきのマークをつけてしまった!! 写真で私の後ろのバナーに点々と赤い血が飛んでるのが見えると思います。 ちなみにこのバナーは友達のケン・ブラックが「Nazoの血しぶきのマーク付きの貴重なバナーだから欲しい。」と、勿論半分冗談でしょうが、そういって彼はイベント後このバナーを持って帰って、今それは彼の自宅のガレージジムに飾られてます。笑

このあと、カナダの友達のトリシアが救急セットを持っていて、私の手の応急処置をしてくれました。彼女は翌日のLCで20kgベルクラス10分間でMSタイトルになってます。OKCインターナショナルのカナダ代表にもなってます。
私のスナッチ競技が終わると、GS界のドン、IUKL副代表のソロドフ氏がやってきて私の手を取って「ハハハ、派手にやったなー!」と、なんか楽しそうに言ってたのが印象的です。笑    以下の写真は、消防団員でもあるトリシアの手慣れた処置風景。