誠に困ったちゃん

過日のこと、ジムにふらりと”KBスポーツの指導をしている”という人がやってきました。仮にWさんとします。

私はKBクラスで指導中だったので、アポイントもなしに突然来たWさんには挨拶くらいしかできず「今”授業中”だから少々お待ちください」みたいに言いました。 Wさん「あー、もちろんOKだよ。どうぞそのままクラス続けて続けて」 Wさんはしばらくベンチに座ってクラスの様子を見学していましたが、そのうち”あー、なっちゃいないな”みたいな感じで首を左右に振り我慢しきれなくなったように立ち上がって私の生徒さんたちに「君のこのフォームはこうするべきだよ」「君はここと、ここと、ここと、ここが間違ってるよ」などと言い始めたのです。 そして私に「彼のここと、ここと、ここを改善させた方がいいね」などと言ってきました。 生徒さんたちはいきなり知らない人が入ってきて自分のフォームや技術が間違ってると言われ混乱してるし、私はだんだんムカついてきました。
1:ウェブサイト等でジムの運営スケジュール等全く確認せずアポイントもなしにいきなり来た。
2:私の生徒さんたちに自己紹介もなくいきなり私の授業中に生徒さんたちにアドバイスを始めた。
3:私はKB指導者としてプロで計画的に指導しているのに、私に指導のアドバイスをしてきた。
礼儀とか常識に欠ける人と判断したので「これは私のクラスなのですみませんが生徒さんたちに色々言わないで頂けますか?」とちょっときつい口調で言いました。 これは初心者のクラスだから、いきなり「技術がどうこう」と言われてもジムに来て1〜2回の人たちにすぐ技術を直せるわけがありません。 アスリートでもない一般人のおじさんとかがケトルを習い始めて数回目であれば技術やフォームはほとんど間違っていて当たり前です。そして運動センスや運動神経がイマイチという方には毎回1〜2箇所くらいずつをピンポイント指導して行かないと一度にあれもこれも覚えられません。「この人一体なんなのよ!?」と思いました。

私に口出しするなと言われてWさんは一度はベンチに戻ったものの、やはり我慢できないようなそぶりでスポーツバッグからベルトやシューズを取り出して着用し、リフティングを始めたのです。もちろん生徒さんたちのすぐそばで。ロングサイクルを16kg~20kg ~24kg...。生徒さんの一人が「いいなー、私もいつか24kgダブルLCやってみたいなー」とWさんに言いました。Wさんは「いやー、今日はちょっと調子悪いから24kg程度しか上がらないけど普段は32kgまで行ったりするんだ」とか言ってる。超ビギナーの人に”自分は上級リフターなんだ”と自慢してどうするのよと思いました。 
クラスが終わるとWさんは私の生徒さん(この日ケトル2回目)を捕まえて雑談をしていました。「このスポーツは体重が重い人が有利だから体重別で競技するのよ」 生徒さん「はー。なら私は太ってるから有利ということですか?」 おいおいおいおい、、、ちょっとまって。”KBスポーツは体重が重い方が有利だから体重別に競技する”というのはデタラメです。 もし体重が重い方が有利なら世界記録のほとんどは一番ヘビーウェイトのクラスの人たちばかりのはずです。KBのランキングではヘビーウェイトクラスは一番レップ数を上げなければならないので一見”体重が重い人が有利”の理論が通るように感じますが、それは素人さんの、うわべだけを見た意見で、本当に強いのは”中の上”クラス、すなわち85〜95kgクラスの人たちです。驚異的な世界記録を更新続ける人たちはこのクラスの人が多いのです。ヘビー・ウェイト級で世界記録を保持し続けているのはイヴァン・デニソフとあと数名くらいです。Co-efficientというKB競技の結果集計方法がありますが、それはその人の体重とベルの重量と結果のレップ数を割り、その人の体重に比例してリフトした重量を割り出すことですが、このCo-efficientではいつも中の上クラスの人が優勝します。ことKBスポーツにおいてはヘビーウエイトクラスは有利どころか”不利”なのです。 というわけで、このように間違った情報を平気で教えられては困るので「Wさん、それは嘘です。」と言ってみんなの前で、本当に強いのは中の上クラスだから、それらの”同クラス同士”を戦わせるのが目的でGSでは体重別クラスを設けているのだ、と訂正しました。 Wさんは中にがっちりしたプラスチックの板の入っているリストバンドでリフトしてたり(うちのジムには初心者でもプロテクション入りのリストバンド使用者はいません)、スナッチもハードスタイルとGSの間のような気合いバンバンのリフティングだったりでなんか変だなと思ったら、聞いたこともないKBクラブの資格インストラクターでGSインスト資格所持者ではありませんでした。そしてペラペラとよくしゃべる! 数号前のこのブログで”口数の多い人は習得が遅い”ということを書きましたが、まさにそんな感じ。
 その後しばらくしてジムに上級リフターさんたちが来てトレーニングを始めたらWさんは出番がなくなったように静かになり女性リフターのたらちゃんが20kgダブルLCしてるのを見たときには一言「す、、すげー」と言って驚いて帰ってゆきました。笑

私はたまにこのような”困ったちゃん”に会うことがありますが、このほとんどの人たちはご自分が”困ったちゃん”という自覚がないのが困りもの。 まあ、せめて周りの空気くらい読んで欲しいのだが、、、、。
私は今までたくさんのKB世界チャンピオンたちに会いましたが、チャンピオンなのに普通の人以上に腰が低く礼儀正しいひとが多いです。私たちは彼らから技術だけでなく、このような姿勢(態度)なども学ぶことがしばしばあります。

まあ、ケトルじゃなくてどんな世界にも困ったちゃんは存在しますが、せめて自分は困ったちゃんにならないよう注意したいものですね。