技術、技術、技術 !

OKCやOKCJのクラブでも、OKC Northのジムでも、私達がKBリフティングの指導をする時に最もこだわっている事は何でしょうか?
答えは一つ。正確な技術、です。
今やKBスポーツリフターは世界に沢山存在していますが、正確な技術でリフトできる人はどれほど居るのでしょうか? インストラクターやコーチの立場の私達も、ロシアのチャンピオン達の様な技術に少しでも近づきたいと、日夜試行錯誤を繰り返しています。

以前私達のジムにある女性がやって来て「自分は何年もKBの指導をしているインストラクターだが、GSはやった事がないのでやってみたい」と言いました。女性ながら片手クリーンなら24kgも扱えるストレングスのある人でしたが、JWは4ヶ月ほど決して10分間の競技スタイルのセットをやらせませんでした。彼女は自分が一般の女性達より力が強く、5ヶ月後の大会でも16kgバイアスロンで高成績を出せる筈だと意気込んでいたのに、10分間の競技セットをやさせてもらえない事に苛立っていました。 ビギナーの頃にKBを10分間連続で振り上げることは勿論メチャクチャきついんだけど、同時に「なにくそ、やったるでー!」という闘志を生み、やり終わったあとに「うわー、凄い!あたし10分間出来ちゃったよ!! KB最高〜〜!!!」みたいなノリになったりします。 これは以前私がクロスフィットをやっていた頃に体験した感覚で、Xフィットでは初心者でも直ぐにガンガン自分を追い込める(追い込まされる)ので、毎度のトレーニングのあとの満足感は今のGSトレよりも強かったです。ドラマチックな達成感を毎回のトレーニングで皆とシェアできるというのが、クロスフィットが世界中にブレイクして行った、一つの大きな要因と私は思っています。インストラクターは、指導するというより喝を入れる役目も大きいです。

それに比べるとGSトレーニングは”地獄の地味地味トレーニング”が来る日も来る日も続きます。Xフィットと比べてGS集客数が少ないのはこれが原因かも? 集客が欲しければ毎回10分とか20分とかのドラマチックなセットを組んで私達は指導する代わりにガンガン喝を入れます。トレーニングを完走させれば達成感の快感に酔いしれ、中毒性が生まれます。 しかしOKC/OKCJ/OKC North のGSトレーニング指導では、資格コースの実技試験を除き、ビギナーにこういったドラマチックなセットをさせる事はありません。 それは“正確な技術”にこだわっている為です。
フィクセイション、ロックアウト、バックスイング、呼吸、ファーストディップやアンダースクワット(セカンドディップ)、、、、、どれが間違っていても、どれがあやふやでもOKCではそこから先に進ませません。ファーストディップやアンダースクワットが怪しければ10分はおろか2分間のセットすらやらせません。ファーストディップやアンダースクワットがきちんとできるようになるまでそこに集中し、その為のGPPプログラムも用意します。 私のコーチはJWですが、私がLCのセットで規定のレップ数に到達できなかったとしてもベストを尽くしてダメだった場合決して怒りませんが、セカンドディップやバックスイングやロックアウトが決まっていなければ「何だそのロックアウトは。見ていて気分が悪くなってくるからオレはもう帰るぞ !」と猛烈に怒ります。

KBリフティングのムーヴメントを、私は”点の集まり”だと考えています。次の連続写真は私が昨年のカリ・オープンで撮ったもので、それを繋げてみました。分かり易く見て欲しいので出来るだけ細かく細切れにしました。 一コマずつを一つの点と考え、一コマの中の(写真で静止した状態の)肘や膝や足首や腰などを一つひとつの点と考えて、良く見て下さい。



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これはどちらも世界チャンピオンで、手前がロシアのイヴァン・デニソフ、奥がカザフ国のイヴジェニ・ゴンチャロフのLC(ロングサイクル)です。最後の写真でレップ数をカウントしているのがこれ又世界チャンピオンのアレクサンダー・コヴォストフ君という貴重なシーンです。
写真のどのコマをとってもフォームがきれいです。これは正確な技術の上に成り立っているフォームです。一つ一つの完璧な点同士が繋がると、いずれ一つの美しい流れのムーヴメントになるのです。
一度技術が自分のものとして固まれば、あとは10分でも15分でも10セットでも20セットでもガンガン練習して数字(レップ数)を追いかければ良いのです。しかし、技術をマスターするまでは辛くても我慢して”地獄の地味地味トレーニング”を行って下さい。 このトレーニングでは、一コマずつの”点”をきっちり押さえること。曲げる所はしっかり曲げる、伸ばす所はしっかり伸ばす。止める所はしっかり止める。フィクセイションであれば、パートナーや仲間や家族の方に、0.5秒以上又は「1」と数えてもらう間は、ベルも頭も腕も足も体も「息をしている以外は完全に全て静止した状態」である事を確認してもらって下さい。 
上級者のKBスポーツ選手の技術は職人芸です。 昨年のOKCJ資格コースではデニスが指導しましたが、重箱の隅をつつく様な細かな技術指導と、彼のテキストブックの様な、美しく正確な技術に参加者の方々も「凄過ぎる・・・」とため息をついていました。美しいフォームは尊敬に値します。

今年、ジャパンチャンピオンシップは10月11日に東京で開催します。 今年は色々な事が大きく変わります。ルールやランキングも変わります。各国からチームでの参加が予想されます。 審判長はOKCメンバーではないので、フィクセイションやアンダースクワットなどが正確でなければレップ数は一つもカウントされません。 「日本のリフターは皆技術が素晴らしい」と褒められる様な、ていねいで美しいリフティングを目指して下さい。今年は出来るだけ沢山の日本のリフターさんの参加を希望します。大会まで9ヶ月あるので、ビギナーの方でも今からコツコツと基本技術を学んで行けば十分大会で競技が行えます。

今日はLCの例を挙げたので、動画もLCのものを紹介します。次の動画は、昨年のジャパンチャンピオンシップの数日後、デニスとノコーナが数週間後の次の競技会の為のトレーニングを行っている所です。場所はJR大森のゴールドジム(いつもお世話になっております!)。デニスは28Kg, ノコーナは22kgのダブルLCです。ノコーナは未だ19歳ですが、既にMSICタイトルのワールドクラスのリフターです。スプリントのLCなのにムーヴメントの中の一つ一つの”点”がきちっと決まっているきれいなリフティングです。

次の動画はノルウェー人のパーさんの28kgダブルLCのスローモーションビデオ。

これだけゆっくり見せてくれると、LCの動きのメカニズムが良く分かりますね。ビギナーの方は良く研究して是非参考にして下さい。た、だ、し、、、ビギナーの方には真似て欲しくない事が一つだけあります。動画の27秒目から30秒目くらいに掛けて、パーさんは”タッチアンドゴー"というテクニックを使用しています。これは何年間もLCをやり続けて来た上級者ならOKですが、初心者がこれを行うと、ムーヴメントの中の大事な”点”をしっかり押さえずに通り過ぎてしまう危険が大きいので、私達はデモンストレーションはしても、このテクニックはビギナーにはやらないよう注意しています。
タッチアンドゴーとは?
LCのルールでは、トップから一旦ラックポジションで一時停止してそこからベルを下に落としてクリーンを行います。この時の一時停止のラックポジションで、胸からポンッとはじき落とすようにほんの一瞬しかラックで立ち止まらない事をタッチ・アンド・ゴーと呼びます。上級者であれば、動画のパー君のように、ほんの一瞬であれ、きちんとラックにベルを収めていますが、ビギナーの場合は、トップからベルを落とした時、一旦”完璧なラックポジション”をそこできちっと作ってからベルを落として(クリーンに入って)下さい。

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