楽しい週末

クリスマス。 この時期の米国は一般的に、皆帰京したり自分の家族とゆっくりクリスマスを祝って過ごすホリデーシーズンである。

NYのクリスマス、私は大好きな部分と大嫌いな部分とに分かれる。大好きな部分は、何処もかしこもツリーやイルミネーションなどで美しくドレスアップされ、街全体がクリスマス一色でとても気分が盛り上がる所。 NYのクリスマスを一度も体験した事無い人には是非お勧めしたい。 しかし、NYの冬は寒いです! そして大嫌いな所は、このNYのクリスマスを家族で体験しようと、寒さにもめげず世界中から観光客が押し寄せ、ホテルもレストランも電車もバスもとにかく滅茶苦茶に混んでしまう所である。 タクシーを捕まえる時などは取り合いのバトルとなる。Xmasプレゼントの為の買い物客でデパートやMAC(PC)の店等は店の外まで人が並び入場制限される。私の家には先週まで英国から17年来の親友が滞在しており彼女と毎日買い物や食事やジムに行ったが、彼女が行きたい場所は混んでる場所ばかりで、人にぶつからずに真っ直ぐ歩く事も出来ず、どっと疲れてしまった。

彼女が帰国した数日後からJWがNYへ来た。彼もクリスマス休暇は毎年実家で過ごしており、ペンシルバニア州の実家に行く前に必ずNYに数日立ち寄る。ちなみにハイディもウィスコンシン州の実家へ里帰りしている。彼女は「私は実家に帰ってるからJWにその間私のマンション使って良いよと言っといて」と言ってくれたけど今回はホテルへ。
JWとXmasの買い物をするが、当然ながら行く所と言えばスポーツ用品店ばかり。どの店でもケトルベルが売ってはいるが、不思議な事にどの店のケトルも正直言って”丸くて重くて取っ手がついていればそれで良し”という感じの粗末な出来のものばかりで驚いた。底までクルリとラバーコーティングされたベルなど床に置いても底がグラグラしている。そして多分、持って帰れる重量でないと売りにくいのか、2kgや4kgといった軽量の物が多い。写真でJWが”重そうに”リフとしている緑のベルは2kgほどで、彼の拳より遥かに小さい。

夜、私もJWも無性にステーキが食べたくなり、とあるステーキレストランへ行った。ここは今でこそ観光客の人気スポットと化してしまったが、その昔はフランクシナトラやモハメド・アリや歴代大統領などがここにステーキを食べに来たと言う有名な老舗で、JWは「一度で良いからここに来てみたかった」と言い、Xmasのお祝いがてら行ってみた。 観光客やロシア人のビジネスオーナー(商人)達、そしてサラリーマンなど今では多様な客層で雰囲気はかなりカジュアル、ジーパンとTシャツ姿のJWでもすんなり入れた。店に入ってコートを脱いだ途端、店のクローク(コートを預かってくれるコーナー)と客案内のスタッフから「ワー、、、(大きい!)。スポーツ選手?」とJWは聞かれた。そして係りに自分達のテーブルまで案内される途中で店の客から「ヨゥ、君はプロレスラーかい?」と声が飛ぶ。店の客たちの視線を感じた。
JWはこの数ヶ月のトレーニングで、僧帽筋三角筋、大胸筋などがもうパンパンに大きくなっていた。Tシャツからはみ出る上腕筋の太さも隠せない。席に着いた途端に隣近所のテーブルの人達から矢継ぎ早に質問が飛んでくる。「なんのスポーツをやってる人?」「凄い大きいねー!!」・・・私達に背を向けて座っていた隣のテーブルの夫婦は私達の方へ椅子を向けて座りなおし、話しかけてくる。私とJWはまさかこんなに人の興味の対象となるとは予想もせず、とりあえず笑顔を振り撒いて皆と会話する。「まいったな、、、俺達はまるでサーカスの芸人みたいだよ・・・」私達のテーブルの係りとなったウエイターのボビーは自分の仕事を忘れたように私達のトレーニングについて質問の嵐だ。他のウエイターやマネージャーとか色々やってきて「やっぱウエイトリフターならプロテイン(ステーキ)だよな」とか週に何回どんなトレーニングをするのかなどと話し掛け、こちらはゆっくり食べてる場合じゃなかった。なんなんだ〜〜〜!!! しかし周りの質問を無視せず2人でニコニコと対応していたのでボビーやマネージャーが「君達はすごくナイスな人達だから」といってビールやサイドオーダーの食べ物をタダでどんどん持って来てくれた。食事中誰かがストロングマンの話を始め、JWが電話帳破りやフライパンを折り曲げたりは簡単に出来るよ」などと言ったので、それを聞いたウエイター数人がキッチンに飛んでいってメタルの皿を持って戻ってきた! それはフライパンの取っ手の部分が無いようなもので、ここではそれに大きなロブスターなどを入れてテーブルに出しているらしい。それをここで曲げて見せてくれというのだ! 「おいおい、、、、マジかよ・・・・」と私に囁くJWだが、この時既に店のマネージャーやシェフやウエイター達や遠くのテーブルの客達まで私達の所に集まり人だかりが出来てしまっており、やらない訳には行かなかった。(ビールもタダでガンガン飲んでたし・笑)JWが椅子から立ち上がると周りの客やスタッフ達が「デケ〜〜ッ!」と言いながら携帯電話のカメラでJWを撮る。こりゃホントにサーカスの芸人(つーか、サーカスのクマ?)ですな・・・
ショータイムである!(笑)。 幸いな事にこのメタルの皿は厚手のフライパンより扱いやすく、JWは一発で皿をクルリと丸めてしまった。観客達は大喜びである。ショーは終わったのに誰も自分のテーブルに戻ろうとせず「もっと何か見せて」と言ってきた。 しょうがないので私達のオハコの人間リフティングを行う。拍手喝采で喜ぶ人たち。その後JW(と私まで)他の客やスタッフから握手をされ、マネージャーは「この丸まった皿は記念に店に飾ろう」などと言ってくれた。写真は丸まったフライパンを持ったJW。私はまさかこんなハプニングが起こるとは思ってもみなかったのでカメラは持っていず、ケータイで撮ったから画質悪し。

私達や”ケトルベル”というものに興味を持った人達にOKCの名刺を配り、JWと「こりゃー、又ここに戻ってこなきゃいかんな。次回はドルビーも連れてこなきゃ!」と話す。

翌朝私が彼のホテルに迎えに行くとJWは「昨日食べ過ぎ飲み過ぎで腹が重い。」と不機嫌。この日は、今やOKC3人の父親のような存在のIKSFAリーダーのアレックスが勤める高級スポーツクラブ”リーボック”でトレーニングさせてもらう日だ。私は今までもここに何度か来ているがJWは初めてだったので、巨大なクラブ内をアレックスに案内してもらい、空いているスタジオをKBトレーニングの為に貸しきってもらった。JWはジャークとスナッチのトレーニング、私はスイングとクリーンとジャークのフォームをJWにチェックしてもらいながら2人で練習した。JWのレップセットをカウントしてあげたが、スナッチのフォームと呼吸がきれいにまとまっており変化に驚いた。途中でアレックスも私達の練習を見に来たが、JWのリフティングはロシア人リフターみたいになってきたねと言ってJWを喜ばせた。写真は50代半ばにして見事なボディーのアレックスとJW。JWはそのポーズから丸く見えるが、実際はロニー・コールマンみたいにバンとしている。彼の二の腕の筋肉の大きさは写真からも見て取れると思うが、もう普通に立って”気をつけ”のポーズで両腕を真っ直ぐ伸ばしてわき腹につける事はできない。ケトルトレーニングとGPPだけでこれだけ筋肥大するものなんだと驚いた。
その夜はアレックスと彼の美しい奥様と4人で最近オープンしたロシア料理レストランへ。 スタッフも全員ロシア人、客もロシア人ばかり。そしてここのロシア料理の美味しい事と言ったら!!! 私とJWはアレックスと奥様のラーラ(2人ともロシア人だ)〜から沢山のロシア語を習い、珍しい味のウォッカを次々に出され、店のオーナーから紹介を受け、楽しいひと時を過ごした。


この店はロシアのS・ペテルブルグ他にも支店がある。このNY店とロシア支店のレストランの入り口の”鍵”は同じ鍵を使用しているのだそうだ。アレックスはマネージャーのセルゲイ(又してもセルゲイと言う名だ・笑)〜に、私達はロシアIKSFAの”ギリ”(ケトルベルのロシア語)のリフターで、S・ペテルブルグには来年も行くよと言うと、セルゲイは「では今日親しくなったお礼に特別な物を差し上げよう」と言って、なんとこの2店舗共通の入り口の”合鍵”を私達にプレゼントしてくれたのである!
キーホルダーにはマトリョーシカ人形のミニチュアがついていた。私達一人ずつにくれたのだが、私とJWが「あー、ここにドルビーが居たら泣いて喜んだのに、、、」と言い、私は自分の鍵をドルビーにあげようと思ったらラーラが「私のをドルビーに挙げて頂戴」と言ってくれた! 感激である! これで私とJWとドルビー3人ともこの店の合鍵を持った事になる。セルゲイが私とJWを入り口まで連れて行き、実際にその合鍵が使える事を試して見せてくれた。本物なんだ! あー、ここにも次回はドルビーと3人で再訪しなければならない!! 私はたまたまアイアンマン誌をアレックスにあげる為に持参していたが、ちょうどカラーで私のS・ペテルブルグのIKSFA記事が載っている号だったので、アレックスと相談し、その雑誌は店に置いてもらう為セルゲイにあげた。

楽しいハプニングの連続の数日であった。
しかし私もJWもここ数日食べ過ぎ。この時期は米国人は皆太ってしまうのだが、要注意要注意・・・なのである!

ナゾ