”巨人” の足元に暮らす私

〜今日は文語調で〜

この数週間色々とあった。
特筆すべきは、とにかく沢山の人に会った事。 出会い、別れ、再会、、、ロシア人達は嵐のようにLAに上陸し周りに台風旋風を巻き起こして再び嵐のように去っていった。 米国内そして諸外国から古い友人達が次々にNYを訪れた。20年来の友人達については前回書いた通り。その他にも沢山の人が現れ、止まり、或いは流れていった。

海外からの友人を訪れた帰り、彼女の宿泊ホテルのエレベーターで、ある初老の男性と一緒になった。
「百合?それともジャスミン?」静かだが暖かみのある声が向けられた。「・・・え?」 「君の香水」 「・・・あぁ。その両方です。色んな花のエキスの混ざった、、、するどいですね」 この男性の顔、見覚えがあるが誰だか思い出せない。私は日頃から人の名前や顔を覚えるのが苦手である。 誰だったっけと思い出そうとしている内にエレベーターのドアは開き彼は「Have a nice day」と微笑んで去っていった。
翌日再び友人と会食の為同じホテルへ行った。 ロビーのソファーに腰掛け友人を待っていると目の前に開いたエレベーターから昨日のジェントルマンが現れた。私「あ・・・・」「ハロー、又会ったね」彼は気さくな微笑と共に私の隣に座った。私は彼に、 見覚えがあるがどうしても思い出せない。何処かでお会いした事があるでしょうか?と聞いた。 彼は笑いながら、自分の名前は”ウォーレン・ベイティ”で、多分君は映画館のスクリーンを通して自分に会ってたかもしれないね、と答えた。 「あーっ、Warren Beatty !?!」 そうか!俳優だったんだ!・・・よくある間違いを起して顔が赤くなった。その後これ以上決定的なミスを起さぬよう注意して題名を選びながら”バグジー””ディック・トレイシー””俺達に明日はない(Bonnie&Clyde)”などの彼の主演/製作映画の話をした。

程なくして私の友人が現れたので彼女にも彼を紹介。「えぇ!? ”あの”ウォーレン・ベイティ!?わ〜・・・・」咄嗟にそれ以上言葉が出ない彼女。 そこへ彼の待ち合わせの人も登場。「脚本家のジェフリーだ」と紹介される。4人で暫く話をした。 そしてジェフリーから突然「そうだ、君映画に出る気はないかい? 着物の似合う日本女性を探しているんだ。」と言われた!「・・・・ハァ!?」 ・・”ハァ?” とは我ながらなんと間抜なリアクションだろうと又顔が赤くなる。 ジェフリーは簡単に映画の説明をしウォーレンも「ジェフリーは才能のある男だよ」と後押しする。 映画を観るのは大好きだが映画に出るなどこれはもう”お門違い”もいいとこだ。なので「ぁぁ・・・・あの、私は今人生手一杯でこれ以上新境地を開く余裕も時間もなくて、、、その、、、」と断ってしまった。断るにももう少し洒落た言い回しが出来ただろうに、ここでも間抜な私だ(笑) 「気が変わったら是非連絡を」と言ってジェフリーは名刺をくれた。 そしてウォーレンも「私はこのホテルの上階のレジデンスに住んでいるから何かあったらここのレセプションを通して私にコンタクトを取っても良いよ。」と。イザベル・アジャーニやジャクリーン・ケネディーからマドンナまであらゆるスター達と浮名を流した彼は73〜74歳の今でも不思議な「いろけ」を放っていた。彼と同年代のジャック・ニコルソンや、それより少し上の歳のクリント・イーストウッドにも同じ”いろけ”を感じるが。。。。。(70を越えた人に”色気”と書くのはなんか変な気もするが、やはり”いろけ”なんだよなぁ、彼等には”老人”と称するにはまだまだ艶がありすぎるんだ・・・)

彼等と別れた後、友人は歩きながら「あなたホントにバカねーー!! 何でイエスと言わなかったの!? やる気が無ければ後からいつでも断れるのに、ああいう時はとにかくイエスと言っとくのよ!! あ〜〜〜っ、最もニューヨークらしい出来事を見ちゃったわ!!」と興奮しながら言っていた。
確かにNYは、一夜にして無名人がスターになったり、揺ぎ無くそびえていたワールドトレードセンターが一瞬にして崩壊したり、チャンスや、想像を絶する事件や事故が予告無く突然やってくる街である。 そして、ウォーレンのようなスターが普通に暮らす街でもある。私の通うネイルサロンは日本人経営の小さな小さな普通の店だが、今年のミス・ユニバースビヨンセパリス・ヒルトンが来て一般人の隣に座って爪を飾ってもらっている。違いと言えば外にボディーガードを立たせている事くらいだ。 行きつけのヘアサロンには(髪が無いのに)ブルース・ウィリスとかユマ・サーマンなどが来る。”Nobu”レストランでは隣のテーブルでNYヤンキースの野球帽をかぶったS・スピルバーグが家族と寿司を食べ、ここの共同経営者のR・デニーロも何度か見かけた。 私が特別な店に出入りしているのではなく、”仕事を離れたスターが静かに普通に暮らす”街で、その辺のスーパーや本屋で見かけてもむやみに声を掛けたりサインを頼んだりするのはルール違反である。

合計して10年以上NYに住んでいるので、今までも色々な人を見かけ、時には話をし、そして通り過ぎて行く。多くの人にはその後二度と会う事はない。 マンハッタン島は面積はとても狭いがここに8百万人近くがひしめき生活している。この街は”巨人”である。そして私は8百万人分の1だ。 ”1”じゃ淋し過ぎるのでハイディも入れて、せめて8百万分の2としておこう(笑)
いつも元気にしているが、時々8百万人分の息で空がどんより曇り、息苦しくなる事がある。 そういう時は大体ハイディの家に行く。彼女は毎回私の為に美味しくてヘルシーな料理をこしらえてくれ、食後は2人で彼女のベッドにゴロンと横になってポツリポツリと小さな会話をする。 料理のお返しに彼女の足をマッサージする事もある。彼女の足はいつもオーバートレーニングでパンパンだから。 男の人と居る時には有り得ない、同性同士でほぐされる心地良さが彼女との間にはある。(と言っても彼女とは時に真剣な喧嘩もするが)

レーニングはちゃんと行っている。うち週2回はLCを1時間以上行う。LAで学んだ事を必死で復習しながら。更に最近はダブル種目やプレスも取り入れている。少しずつ、少しずつ上に登って、、、、、。

気分的にマイルス・デイビスのニューヨークレコーディングのJazzビデオをアップしたかったが、良い映像のものがなかったので、ビヨンセの旦那さんJay-Zアリシア・キーズのビデオを紹介。アリシア・キーズは個人的にあまりファンではないが、このビデオ映像を見れば私がこの街を”巨人”と呼ぶ意味が少し解っていただけるかも。 ちなみにこの曲はNYヤンキース球場で試合が始まる前に必ず掛かる。勝利試合の後にはフランク・シナトラの”ニューヨークニューヨーク”が球場中に流れる。
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