ジャパンツアー後記

ジャパンツアーが終了した後、私は旅程を延長し暫く実家に滞在して病気の家族と貴重な時間を過ごした。 しかしその合間にも幾つかのケトル関係のアポイントがあり、会合やビジネスディナーに出掛けた。

NYに帰宅して未だ一週間も経っていないが、帰宅すると「お帰り」と迎えてくれたのは山の様に溜まった仕事・・・ううう・・・。
そして現在は、10年過ごしたマンションの引越しの為、荷造り作業に追われ、毎日車で少しづつ荷物を新居に移動。 私の家にある最も貴重な宝物の一つである、ン十年もののスタインウェイのグランドピアノを動かそうと思ったら、テコでも動かない。 マンションのサービススタッフ達に応援を頼んだ。ここに10年も居るからマンションのスタッフ達は皆友達のようである。 私はNYでケトルイベントの度に自分のベルを何個も搬出搬入作業をするのだが、その度にここのスタッフ達に少しづつスイングやリフティングの仕方を教えたりしてきたので、彼等はうちに来てケトルを見ると皆喜んで遊びたがった。 このリアクションって世界何処に行っても同じである。 そしてケトルをブンブン回しながら「チャンプ(私のあだ名・笑)、ケトルを10分間も挙げられるのにピアノを1インチも動かせないなんて恥ずかしーっすよー・笑」とからかわれた。 ここのマンションにはスタッフ総計30人位いるが皆”気は優しくて力持ち”である。 ボクシングのTV中継がある時は彼等とその話で盛り上がる。ケトルイベントの時はケトルの運搬を手伝ってくれた。 彼等と別れるのは淋しいな〜と思った。引っ越しても時々ここに遊びに来よう。

夜はジャパンツアーの会計報告をまとめたり、お世話になった各社へのお礼状を書いたり、写真の編集、アイアンマンのロシア紀行の続編執筆、そして次のOKCイベント、オハイオ州とノース・キャロライナ州でのイベントの告知を出したり、、、今日まであっという間に時間が過ぎていった。 ジャパンイベントは今回3人での訪日で、経費が恐ろしく掛かった。地下鉄やローカルの電車代を抜かしても、新幹線や特急列車の代金だけで、3人で16万円!日本は国内移動の費用が高い。飛行機代が50万円ほど、そして一部のホテル代、、、。 アメリカではなくて日本⇔韓国位の距離だったらどんなに楽だろうとため息が出た。 それでも今回初めて黒字イベントとなった。 ご褒美にと仕事の合間に京都と大阪で少々遊ぶ事ができた。 今迄経済的に苦しい思いをしても日本に行き続けて本当に良かったと実感した。 訪日イベントの度に確実にリピーターが増えてきてくれ、「楽しかった。次回も是非参加したい」と言って下さる言葉がどれほど嬉しく又励みになるか。

日本のKBワークショップには特徴がある。 受講者の方々がとても”静か”なのだ。
私は種目の一項目毎に「質問は?」と聞くが、1つか2つあれば良い方で大抵質問や発言はあまり無い。 しかし外国特に米国では講義や進行が遅れるほど質問や発言が多い。 (無駄な発言もかなり多い・笑) ひどい時は「質問は後でまとめて聞くから今は集中して聞いて下さい」などと言わねばならぬほど。 私とJWは予めドルビーに「日本の参加者は静かだけど、退屈しているのではなく、一生懸命真剣にコースを受けているのだから、それをリスペクトしなければいけない」と言っておき、実際ドルビーは後で”真剣そのものの姿勢でコースを受ける受講者に感動した!”と言っていた。 静かであり、大変に熱心で、そして最後に「楽しかった。色々学べた」と言って下さる。
日本人文化の美的な所だと思う。


実家で家族との団欒中父が「現代日本人の30代の死因のトップは自殺だそうだ。」更に「世界の国々の”幸せ度”のリサーチの結果、”自分は幸せである”と思っている人の人口は日本は先進国で最下位の方であった」と言った。 とてもショックであった。 私達のワークショップに来てくれた方で30代の人も多く居たが、皆目がキラキラと輝いていて本当に楽しそうだったし、汗を流しながら活き活きと一生懸命ケトルを振っていた。 防府の仲間達に至っては、インディアンクラブを渡したやいなや、いきなりそれで”チャンバラごっこ”が始まって、他の仲間が「やれやれNazoさん、彼等に新しいおもちゃをあげちゃったみたいですねー(笑)」と言い、インディアンクラブを振り回し広い道場の中を追っかけ合っている元気一杯の彼等を見て思わず噴出してしまった。 一人ひとりの心情が幸せかどうかまでは分からないが、少なくとも私やJWやドルビーは、心から楽しそうに体を動かしている、愛すべき”山ザル軍団”(笑)を見て自分達も幸せな気分になり、メ一杯楽しい時間を共有する事ができた。 山ザルとほど近いケイブマンのドルビーや、猿というよりは巨大熊のようなJWも同種で、体を動かしている時は本当に楽しそうである。そして・・・これは余談だが、私はここの仲間達から、やんちゃなJWやドルビーを統率している事から「姐御はまるで猛獣使いですねー」と言われた(爆笑)。 ともあれ、こんな熱心で楽しい人達を見て、父が言った事が本当だとはとても信じ難い。


JWとドルビーの視点から見えた日本。
礼儀正しくて、真面目で、丁寧でシャイで、規律が多く、電車の中や通行人やエレベータの中で人々は互いに目を合わさず一応に下向き。”物”が氾濫し若者でもシンプルに体を動かすより小さなアパートの中で携帯メールやパソコンをいじる方を好み、人と接する時間より電子機器と向き合っている時間の方が多い。
”規律”では,特にJWは大きなトラブルにぶつかった。東京の大森で宿泊した温泉ホテルやジムなどで「イレズミお断り」または「イレズミをシールで隠せ」と言われ、その度に私はマネージャーや支配人等を呼び出してもらい長々と交渉したが、JWには随分悲しい思いをさせてしまった。又ホテルやジムのプールでは、JWの肌身離さず身に着けているネックレスを外せと言われ「これだけは手術台にでも上がらない限り外せない!」 と言い、結局どのプールも入れなかった。 彼はこれから更にイレズミを増やして行くつもりだが、「日本に行く事がある限りこれ以上イレズミを増やせないかも」と真剣に悩んでいる。 こればかりは私も何と言って良いか分からない。

ドルビーはコミュニケーションの達人であった。 何処でも老若男女構わず話しかけ一生懸命日本語で会話をしようと頑張っていた。

JWもドルビーも何故かお年寄りや小さなお子ちゃまには大変人気があった。 そしてグループディナーでは「他の外人が嫌がって食べたがらないような物を食べたい」と言い、鳥の心臓、モツ煮込み、レバ刺し、牛の心臓の刺身、イカやタコの塩辛、馬刺し、鯨の刺身・・・とにかく全てに挑戦した。朝食は洋食は断りコンビニのオムスビを毎日食べていた。

私も色々な意味で本当に勉強になる2週間であった。 反省点もあったし、悲しい事もあったし、JWと喧嘩になる事もあった。 防府から大阪に移動する日は、(又しても!!) 新幹線のトラブルで運行停止となり、私達は危うくどこかで足止めを食らう所であった。 しかし、総評して本当に素晴しい、大成功の旅となった。
日本で「幸せでない」と思っている人が居たら、ケトルを買って勉強し私達のワークショップに是非参加して欲しいなと思う。いや、私達のワークショップでなくとも、今では日本の所々でケトルベルの小イベントは行われているから、インターネットなどのオンライン上でケトルベルを語ったり勉強するだけでなく、実際にイベントに参加し、講師や他の仲間と出会い楽しさを共有して頂ければと思う。

そしてOKCでは今後更なる発展を考えています。
乞うご期待。

ナゾ